窮鼠はチーズの夢を見る
こんばんは。
今日は水城せとなさんです。
水城せとなさんの漫画『失恋ショコラティエ』や『脳内ポイズンベリー』はドラマ化していますので、BLを読んでいない方にも有名です。
こちらの『窮鼠はチーズの夢を見る』を私が最初に読んだのは10年ほど前かと思いますが、10年間ずっと私の中で引きずり続けている作品です。
2004年から5年間連載されたものが2冊単行本化されていましたが、去年映画化されまして。それをきっかけに、その2冊をまとめ、番外編も含めたオールインワンエディションが発売されました。
番外編のためだけに買いましたとも。
そして改めて読み直し、やはり尾を引いています。本当に名作です。
主人公。
大伴恭一。
既婚者だが誘いを断れずに流され、ふらふらとしている。つまり不倫をしている。流され侍。
今ヶ瀬。
恭一の大学時代のサークルの後輩。ゲイで、出会った当時から恭一のことを好きだったが、恭一には彼女がいたため気持ちを告げることもなかった。
そんな2人が再会し、恭一の不倫をネタに関係を持ちます。
恭一は根っからのノーマルであり、女の子が好きです。でもめちゃくちゃ流されやすいので、断りきれず今ヶ瀬にも結局流されます。
今ヶ瀬との関係に慣れ、心地よく感じる反面、男と関係を持つ自分に疑問を感じたり、今ヶ瀬のことを好きだと認めることができなかったり。
ノンケとゲイというテーマで描かれていますが、すごくリアルなんです。
至ってノーマルな人が美形な同性にすごく迫られ、尽くされ、こんな関係も悪くは無いかなと思うことがあるかもしれません。好きだと思ったり、大切だと思うかもしれません。
でも、その相手を恋人と認めたり、将来を考えたりできるかというと、簡単にはいかないですよね。
しかもそのタイミングで、元々の恋愛相手である素敵な異性が現れたら…。
読んでいると、フラフラしている恭一さんに、今ヶ瀬が可哀想だろ!とイライラするんですが、自分の立場で考えると、分かる気もします。
ちなみに、2人はリバです。
エロシーンは結構しっかりあります。
今ヶ瀬は序盤はかっこいいんですが、内面はすごくネガティブで嫉妬深くて余裕がない可愛いやつで、どんどん可愛くなります。でもリバです。(リバ好き)
今ヶ瀬は、ノンケである恭一さんとの関係にものすごくネガティブです。
一時的な関係であるとわきまえている。
今ヶ瀬は本当に恭一さんのことが大好きなんですが、恭一さんの性格もよく知っているし、自分がパートナーでいられるとは思っていません。
これが、すごく切ないです。
2人の思考がそれぞれ理解できます。うんうん、なるほど、わかる。と思いながら読むのですが、簡単にうまくいかないんです。
それがとてもリアルです。
よくあるBLの、ノンケがゲイに迫られて、付き合って幸せに…なんて、現実じゃそうそう起こり得ないですよね。漫画の登場人物のように、綺麗なだけの人間なんていないですし。、
本当のゲイとノンケの恋だなと感じます。
そして、本当に名台詞が多くて、恋愛についても、男同士ということについても、考えさせられる台詞ばかりです。
BLというジャンルには収まりきらない名作です。読んだ後に尾を引きますが、後味が悪いとかではなく、ただただ自分の中に落とし込むのに時間がかかる作品です。
初めて読んだ時に感じた違和感も、何度か読み直すとストンと落ち着くし、2人に同調できます。(不倫・浮気はダメですが)
本当に名作ですので、今更私がご紹介することもないかと思いましたが、オールインワンエディション発売に伴い、ご紹介させていただきました。
ちなみに番外編は、本編終了の約10年後に描かれたものです。絵が変わっていますが、2人のその後が少しでも読めて本当に嬉しかったです。
今ヶ瀬が恭一さんに出会う前〜現在(本編の少し後)までのお話で、現在は本当に少しなんですが、買って良かったと思いました。
2人の未来が明るいことを願うばかりです。
うまくご紹介できた気がしませんが、魅力が少しでも伝われば幸いです。きっと得られるものがありますので、読んでみてください。
それでは、おやすみなさい。